トラックのタイヤが外れて大きな事故になった、というニュースを目にしたことはないでしょうか。近年、大型トラックタイヤの脱輪による事故が増えています。
さまざまな要因で起きてしまう脱輪について、予防策と合わせてご説明します。
大型トラックタイヤの脱輪はなぜ起こるのか
大型トラックのタイヤが外れてしまう原因はたくさんあります。今回は、トラックタイヤの整備不良が原因で起こる、脱輪について詳しく見てみましょう。
こまめな確認と整備ができていれば絶対に起きることがないはずの「トラックタイヤの脱輪事故」。そのほとんどが、ボルトを既定値までしっかりと締め付けられていなかったという作業ミスによるものだと推定されています。
ホイールボルトの締め付け不足以外にも、このような原因があげられます。
・一定の距離を走行した後に、ホイールボルトの増し締めを行わなかった
・指定されたホイールナット・ボルトを使用していない
・過剰な負荷によるホイールナットやボルトの破損
また、国土交通省の集計では脱輪事故の9割がタイヤ交換・脱着後、3カ月以内に発生し、特に左後輪の脱輪が多いとのことです。左折や右折の負荷、降雨対策でセンターラインが高くなっている等が原因と考えられています。
さまざまなことが原因で脱輪は起きてしまいます。整備したから安心、と思わずこまめに確認しましょう。
タイヤの脱輪を防ぐには?
トラックタイヤの脱落・脱輪は、多くの場合ホイールの脱着後に発生していることがわかりましたが、防ぐことはできるのでしょうか。
ホイール履き替え時のチェック
トラックタイヤの履き替え時は、ホイールナットやボルトの締め付けを数値でチェックすることが大切です。
特にスチールホイールからアルミホイールへと履き替える場合は、数値だけでなくホイールナット・ボルトの種類まで、しっかりとチェックしましょう。
スチールホイールとアルミホイールでは、ホイールボルト・ナットの種類が異なる場合が多く、しかもパッと見ただけではその違いはわかりにくいものです。
ホイールナット・ボルトの種類が違うと、接地面が足りなかったり合わなかったりするため、規定のトルクで締め付けたとしてもしっかり締まりません。これは脱輪の大きな原因になるので、気をつけておきたい部分です。
確実な締め付けをすること
走行中の振動や重みが負担になって、徐々にホイールボルト・ナットがゆるんでしまうことがあります。トラックのホイールはボルトとナットで締め付けられているので、一箇所がゆるんでしまうと、残されたボルトへの負荷は大きなものになります。そのうち負荷に耐えかねたボルトが壊れ、トラックタイヤはホイールごと脱落します。
そうなる前に大切なのが「ホイールボルトを指定のトルクで締め付ける」ことです。
トラックの車種によって「規定のトルク」は違ってきます。取り扱い説明書に記載があるので、確認しておきましょう。
規定のトルクは以下の数値です。
・JIS方式(8穴)、新ISO方式(8穴・10穴)は550~600N・m(大型車の締め付けトルク)
・JIS方式(6穴)、ISO方式(10穴)、新ISO方式(8穴・10穴)は、車両ごとの規定トルクを使用
増し締めをすること
トラックタイヤの交換後は、ホイールナットの取り付け直後に起きやすい摩耗「初期なじみ」によって、締め付ける力が低下してしまいがちです。そのため、50~100kmの走行を目安に「増し締め」を行うことが肝心です。
増し締めとは、ホイールナット・ボルトの「ゆるみチェック」と「締め付けトルクの確認」をすることです。これは、規定トルクで締まっていればそれでOKという意味で、ただ強く締めればいいというわけではありません。締め付けすぎて「オーバートルク」という状態になるとかえってホイールナットやボルトに負担を掛け、ゆるみや破損の原因になるので要注意です。
トルクレンチを使うこと
締め付けが不足していても、強く締め付けてすぎていても危険なホイールナット・ボルトですが、「トルクレンチ」を使用することで解決します。トルクレンチを使用すると、指定したトルク数値で締めることができる仕組みになっており、確実な締め付けを行えます。
ホイールまわりの日常点検をすること
走行前後に、気をつけたいチェックポイントをご紹介します。
・ホイールボルト・ナットがすべてしっかり付いているか
・ホイールに亀裂やヒビが入っていないか
・ホイールナットからボルトが出ている量が揃っているか(一部が飛び出したりしていないか)
・ホイールナット・ボルトにサビが出ていないか(サビがあると規定トルクで締め付けてもゆるみが発生しやすいため)
毎回、走行の前後に足まわりのチェックを日常的に行うことで、些細な異変に気づくことができ、脱輪を予防できます。もし、異常を発見したらすぐ専門家に相談しましょう。
タイヤの空気圧をチェック
ホイールナット・ボルトまわりだけでなく、タイヤの状態や空気圧についても日常的な点検を忘れないようにしましょう。
特に空気圧が適正でない場合、タイヤがパンクやバーストを起こすケースやボルトの折れからタイヤの脱落・脱輪につながるケースがあります。
また、トラックタイヤの空気圧が低いと、タイヤがたわみやすくなり、最悪の場合はホイールから外れ、後方へ飛んでしまうケースもあります。
足まわりの整備不良は大きな事故につながりやすいので、日常的にタイヤ周辺をしっかりチェックする習慣を付けたいものです。
また、自分で点検することも大切ですが、定期的に専門家に見てもらうとさらに、確実なものになります。
定期点検の際にはタイヤ周辺に問題がないか、ホイールナット・ボルトは適正値で締まっているか、などをプロの目で確認してもらいましょう。
ハンマー点検でナットやボルトの締まりをチェック
ホイールナットやボルトのゆるみは、点検ハンマーを使って最終チェックをしましょう。ハンマー点検とは、運送業者等がよくおこなう点検方法です。ホイールナットの下側に指を添え、上側をハンマーでナットが閉まる方向に叩きます。指に伝わる振動や音が、正常に締まっているナットと同じか、調べることで締まりを正確に確認できます。
タイヤの装着は技術力を持ったヘラクレスがおすすめ
トラックのタイヤは、常に重い積み荷を載せた車体を支えながら、加速や減速時の摩擦をダイレクトに受け続けている場所。そのため、日々トラックのタイヤ周辺に掛かっている負担は、私たちの想像を超えるものです。
自分でするタイヤチェックのほかにも、プロによるタイヤチェックの機会が、定期的にあると安心ですね。
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